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四叠半神话大系

作者:森見登美彦(日)
栏目:文学.小说
类别:国外
大小:586KB
评价星级:★★★★☆
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书籍节选

书籍章节作者介绍
大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。  責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。  私とて誕生以来こんな有様だったわけではない。  生後間もない頃の私は純粋|無垢《むく》の権化であり、光源氏《ひかるげんじ》の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、邪念のかけらもないその笑顔は郷里の山野を愛の光で満たしたと言われる。それが今はどうであろう。鏡を眺めるたびに怒りに駆られる。なにゆえおまえはそんなことになってしまったのだ。これが現時点におけるおまえの総決算だというのか。  まだ若いのだからと言う人もあろう。人間はいくらでも変わることができると。  そんな馬鹿なことがあるものか。  三つ子の魂百までと言うのに、当年とって二十と一つ、やがてこの世に生をうけて四半世紀になんなんとする立派な青年が、いまさら己の人格を変貌《へんぼう》させようとむくつけき努力を重ねたところで何となろう。すでにこちこちになって虚空に屹立《きつりつ》している人格を無理にねじ曲げようとすれば、ぽっきり折れるのが関の山だ。  今ここにある己を引きずって、生涯をまっとうせねばならぬ。その事実に目をつぶってはならぬ。  私は断固として目をつぶらぬ所存である。  でも、いささか、見るに堪えない。        ○  人の恋路を邪魔するものは馬に蹴《け》られて死んでしまう運命にあるというので、私は大学の寥々《りようりよう》たる北の果てにある馬術部の馬場には近づかないことにしていた。私が馬場に近づけば、猛《たけ》り狂った荒馬たちが柵《さく》を越えて襲いかかって来て、よってたかって私を踏みつぶし、すき焼きの具にもならない汚い肉片に変えてしまったことであろう。同様の理由によって、私は京都府警平安騎馬隊をひどく恐れた。  なぜ私が馬を恐れたかと言えば、私は知らない人も知っているほどに悪名高い、恋ノ邪魔者であったからである。私は死神のいでたちをした黒いキューピッドであり、恋の矢のかわりにマサカリを振るって、赤外線センサーのように張り巡らされた運命の赤い糸を、切って切って切りまくった。その所業のために、若き男女が大盥《おおたらい》六つ分の苦い涙を流したという。  まことに非道の極みである。それは分かっている。  そんな私も、大学に入る直前には、ひょっとするとあるかもしれない異性との薔薇色《ばらいろ》の交際にむけて軽い武者震いをしたこともあった。入学後数ヶ月を経ずして、そのような決意を強いてかためる必要はなかったことが判明したものの、「俺は決して野獣のようにはなるまい、清く正しく紳士的に、麗しの乙女たちと付き合って行こう」と心に決めたことさえあったのである。いずれにせよ、理性を放擲《ほうてき》して闇雲に結びつかんとする男女を大目に見てやるぐらいの器量はあったはずだ。  それがいつしか、心の余裕を失い、ほころびた赤い糸の切れる音を耳にするたびに言いしれぬ愉悦を感じる極悪人へと転落した。切れ切れの赤い糸が恨みの涙に浮かぶ失恋横町。その絶望的な隘路《あいろ》に私が踏みこんだのは、私の宿敵であり盟友である唾棄《だき》すべき一人の男の手引きによるものである。        ○  小津《おづ》は私と同学年である。工学部で電気電子工学科に所属するにもかかわらず、電気も電子も工学も嫌いである。一回生が終わった時点での取得単位および成績は恐るべき低空飛行であり、果たして大学に在籍している意味があるのかと危ぶまれた。しかし本人はどこ吹く風であった。  野菜嫌いで即席ものばかり食べているから、なんだか月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚《はなは》だ不気味だ。夜道で出会えば、十人中八人が妖怪《ようかい》と間違う。残りの二人は妖怪である。弱者に鞭《むち》打ち、強者にへつらい、わがままであり、傲慢《ごうまん》であり、怠惰であり、天《あま》の邪鬼《じやく》であり、勉強をせず、誇りのかけらもなく、他人の不幸をおかずにして飯が三杯|喰《く》える。およそ誉《ほ》めるべきところが一つもない。もし彼と出会わなければ、きっと私の魂はもっと清らかであっただろう。  それを思うにつけ、一回生の春、映画サークル「みそぎ」へ足を踏み入れたことがそもそも間違いであったと言わざるを得ない。        ○
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